門出

私は旅にでる。

さむさが残る朝。

そこに私は立っていた。

風は無い。

潤う光の中で静かに波の調べだけが心地よいリズムを刻んでいる。

目の前には圧倒されそうな程の存在感を示す岩。

自然界の門番のようなその光景は、壮大すぎてどこか不安や恐怖を感じさせる程だ。

画家になる事を決意し、違う世界へと進み出したあの頃。

私自身の気持ちを投影させた作品。

人はみな長い人生において門出に立つ時がある。

一人一人に違った門出。

その先の見えない未来への遥かな道を旅する。

それはいつだって勇気がいるものだ。

そして不安だってある。挫折や困難も待っているだろう。

大きな決意と共に脱サラして長年の夢へと進み出す人、卒業して就職し社会人として新たな大人の世界へと入っていく若者達。

多くの人が不安や恐怖の入り混じった希望を胸に抱き、無限の可能性に心躍らせ

夢へと動き出す。

時に人は、長い旅のなかで自分の弱さにさいなまれる事だってあるだろう。

迷い、悩み、もがき苦しみ。。。

逃げ出したくなる時だって、弱さに向き合う強い心を羨ましく思う時だってある。

そんな時、送り出してくれた人の顔、決めた自分の強い決意を想い出す。

それが時に、旅のお守りになり力になったりする。

作中に登場する、小さな手ごき船、

いかにもすぐ壊れそうな小さなそれは、まだ何者でもないもろい自分。

悠々と聳える岩肌の隙間を劈くような強い光。

堅い岩をも貫く強い意志と決意を強い光で表現したかった。

濁りのない澄んだ空気がよりいっそう強く差し込むそれを際立たせる。

そしてその守護たる光の十字架にエールを込めて描いた。

それは描いた私自身に対するものだったりするのかもしれない。

 

寺本和純